喫茶店と日常

喫茶店とジャズと食べることが大好きな人間のちょっとしたつぶやき。

珈琲に、後悔がひとさじ。

昨日、大好きな喫茶店の閉店の報せがあった。

たくさんの喫茶店に行っているけれど、やっぱり一番大好きで、行くと安心する地元の素敵なお店だった。ご夫婦で切り盛りされていて、何度かお話させていただいたこともある。「リビングだと思ってくつろいでね」と声をかけてくれた優しい笑顔が忘れられない。

そのお店は、とにかく小さなところまで気を配っていることが感じられた。トーストについてくるサラダ。はちみつが入っているかわいい容器。自家焙煎珈琲のお店だけど、紅茶もダージリンの夏摘み、ミルクティー(アッサムとニルギリのブレンド、なんと茶葉の量が2倍で私好みの濃厚なミルクティーが飲めた)、スパイスが絶妙なチャイなど専門店に負けないクオリティだった。
スペシャルティ珈琲は、珈琲には明るくない私でもめちゃくちゃ美味しいと分かる、とにかく珈琲の美味しさを最大限引き出したような味。たまにマスターから聞く豆知識が好きだった。
自家製トーストは国産小麦100%使用。香ばしくて、幸せな味がした。今まで食べたどんなトーストよりも美味しかった。チーズケーキも自家製。ゴルゴンゾーラの濃厚なバスクチーズケーキや、期間限定のチーズケーキだってどれも珈琲に合う美味しさだった。戸を開けて店を出るとき、かならずマスターや奥様が「またお待ちしています」と会釈してくれていた。

このお店に向かうとき、暗い気持ちを抱えている時もあった。でも、帰路につく頃には足取り軽く、自然と口角が上がり、満ち足りた気分になっていた。

落ち着いたお店だったから、よく勉強や読書に利用させてもらった。申し訳ないくらい長居したときもあった(かなり反省した)。大好きな友達や、同じく喫茶店が好きな母親ともよく行った。

本当に、大好きなお店だった。開店を知ってからこんなに通ったお店ははじめて。学校やバイトの関係で帰りが遅く、寄れないときもあった。あの頃に戻れるのならもっともっと行きたかった。
目の前の珈琲やと向き合い、その味に身をゆだね舌鼓を打つ。バタートーストにたっぷりとはちみつをかける。ひたすらに幸せの味がする。ストレスが溶けていく。涙が出るくらい幸せだった。

毎回、喫茶店の閉店の報せには胸を痛めていたけれど、今回は本当に衝撃だった。

きっとこれから、さらに閉店の報せを耳にする機会が増えるだろう。ただでさえご主人が高齢というケースが多いのに、値上げの止まらない諸々。

どうにかしたいのに、非力な自分が嫌になる。

どうか愛しているものが、場所が、人が、ずっと在れますように。

私も悔いのない毎日を過ごしていこう。

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